仮想現実(VR)と拡張現実(AR)の違いとビジネスにおける活用例を紹介

仮想現実(VR)や拡張現実(AR)というキーワードを耳にする機会が増えています。それらの実現に必要となるITデバイスの性能や技術が急速に進んでいることから、私たちの身近な存在となってきました。また、仮想現実(VR)や拡張現実(AR)を用いたメタバースも広がりを見せています。

本記事では、仮想現実(VR)と拡張現実(AR)の違いとともに、メタバースから見える将来展望や活用例を紹介します。

仮想現実(VR)・拡張現実(AR)の意味と違い

まずは、仮想現実(VR)と拡張現実(AR)について、意味と両者の違いを紹介します。

仮想現実(VR)と拡張現実(AR)の意味

仮想現実とは、映像すべてが仮想(バーチャル)である世界に、使用者自身が入り込んだような体験を提供する技術です。Virtual Realityの頭文字をとった略称で「VR」と呼ばれます。専用のヘッドセットやゴーグルなど、外界と自身を隔離するデバイスを装着することにより体験を実現できます。

拡張現実とは、実際に目の前にある世界にデジタル技術による情報を付加することで、使用者が体験する世界を拡張できる技術です。Augmented Realityの頭文字をとった略称で「AR」と呼ばれます。スマートフォン、タブレットやサングラス型グラスのような専用デバイスにより表示した現実世界に、デジタルで付加した映像や情報を重ね合わせます。

仮想現実(VR)と拡張現実(AR)の違い

VRとARの違いは、デジタル技術の使い方と、使用者がどのような体験をするかにあります。VRはデジタル技術により仮想の世界をつくり、使用者はその世界を体験します。一方でARは、目の前にある現実空間を使い、デジタル技術により創造したオブジェクトを融合させた世界を体験します。

VRとARを融合させたものとして、複合現実(MR:Mixed Reality)があります。ARと同様、現実世界の空間に、仮想のオブジェクトを重ねることができる技術です。MRはARと違い、直接ユーザーが仮想オブジェクトを操作することができる特徴があります。

メタバースの国内市場から見る仮想現実(VR)・拡張現実(AR)の現状と将来展望

2023年8月に株式会社矢野経済研究所は、仮想現実(VR)や拡張現実(AR)などを活用したメタバースの国内市場動向調査の結果を発表しました。調査結果によると、メタバースの国内市場規模は2021年度で793億円、2022年度で1,377億円となっています。

同レポートでは、2022年度までの状況について、メタバース市場形成の前段階で、参入した事業者は競争よりも業界全体の盛り上げに注力していたと分析しています。また、これまでは緩やかに認知が広がっていたが、一気に加速し一種のブームといえる状況であったとしています。

2023年度の市場規模は2,851億円の見込みです。2023年度については、ブームが落ち着き、新型コロナウイルスによるリモートワーク推進といった特別な事情もなくなってきていると見られています。

今後については、ビジネスモデルが明確化している企業があり、市場環境が整ったことから業績を伸ばす企業が増えているため、さらなる市場拡大が期待されています。2027年度には市場規模が2兆円を超えることが予測されています。

参考:メタバースの国内市場動向調査を実施(2023年) |市場調査とマーケティングの矢野経済研究所

仮想現実(VR)・拡張現実(AR)の活用例

仮想現実(VR)と拡張現実(AR)が、ビジネスでそれぞれどのように活用されているのか、業種別の活用例を紹介します。

仮想現実(VR)活用例

仮想現実(VR)の活用例を紹介します。

  • 製造業

基本的に事務所で業務を行う設計のような内勤業務でも、必要に応じて現場に出向かなくてはいけません。事務所と現場が同じ敷地内にあれば移動も容易ですが、離れているケースも少なくありません。そのような場合にVRが有効です。

VRにより事務所内に現場を再現することで、事務所にいながら現場にいるような体験ができます。この機能を用いて現場研修を実施する、普段の業務で事務所から実物を目にしながら現場作業員へ詳細な作業指示を出すなどが可能です。

また、新製品開発会議では、VRで現場を表現するだけでなく、試作品の形状・動作・設置イメージもVR上に表現し、詳細な議論が行えます。実際に材料費を使い製作する必要がなく、自由に形状変更や改善もできるため、新製品開発時のコスト削減にも役立つでしょう。

  • 医療現場

研修の際には、より多くの症例にふれることが効果的ですが、全国各地で同一の研修を実施できるわけではありません。VRを導入することで実際の現場に行くことなく、患者の診察、緊急医療の体験、ベテラン医師の手術などのさまざまな体験を実現し、効率的な研修を実現できます。

また、精神障害を持つ患者が悩んでいる症状(幻聴・他人の視線など)をVRで疑似体験することで、患者の悩みを理解することに役立てられます。この機能は、例えばVRで表示した安全な環境内で患者のトラウマを思い出させ、危険がないことを学習させることで克服をめざすなどの治療にも生かせます。

  • 不動産業界

VRにより、現地に行くことなく内覧が可能になり、短い時間でより多くの物件を内覧できます。まだ完成していない物件もVRで完成後の内覧を体験できるため、イメージを共有しやすくなり、顧客の購買決定につなげられます。

拡張現実(AR)活用例

続いて拡張現実(AR)の活用例です。

  1. 物流業界

倉庫内には数多くの商品が保管されており、ピッキング作業は大変な労力を要します。そこで棚にARマーカーを設置し専用デバイスで読み取ることで、探している商品がある方向をデジタル表示させ、商品の捜索をサポートします。ARグラスのような、両手が自由になる専用デバイスを用いれば、よりピッキング作業の効率向上につながります。

  • 土木・建築業界

3Dモデルにした建設機械と実際の工事現場の映像をAR表示することで、近接建物との距離・関係や搬入経路・動線をあらかじめ確認できます。ただ機械や現場を表示するだけでなく、通常では見えない地質状況や地中の配管などもARにより可視化できるため、想定されるトラブルを作業前に確認して事前回避が可能です。

  • 観光

パンフレットや展示物に設けた二次元バーコードを、スマートフォンやタブレットなどのデバイスで読み取ることで、動画・音声案内を聞くことができます。また、デジタルモデルを表示させることで、文化財や展示物の過去の姿を見せ、SNS映えする写真や動画の撮影を可能にします。

ユーザックシステムでも、地域の歴史や文化を魅力的に発信できるARアプリ「ええR(ええあーる)」を提供しており、すでに多くの地方自治体でご活用いただいています。導入事例をご参照のうえ、観光誘致の強化にぜひご検討ください。

仮想現実(VR)や拡張現実(AR)は今後ますますビジネス活用が期待される

仮想現実(VR)や拡張現実(AR)は、今後さらなる活用が期待されます。技術の進化やデバイスの普及が進むにつれ、ビジネスへの活用は、ますます多角化していくことでしょう。今回紹介した活用例が示すように、業界を問わずさまざまな分野や場面で活用することが可能です。 まずは、仮想現実(VR)や拡張現実(AR)について、何を実現できるものなのかを理解し、今後のビジネスのヒントとしてみてはいかがでしょうか?